鹿児島県霧島アートの森 開園二周年 美術講演会  
 
 今映っているのは、この公園の中のメインストリートです(スライド画像:S.01)。このメインストリートの周囲の芝生だけで、多分この彫刻公園の何倍かあると思います。大変美しい紅葉の並木でした。ここでは、彫刻が本当にゆったり並べられているのです。1万坪に1点ぐらいという感じでしょうか。霧島も並べ方は大変ゆったりしています。箱根の彫刻の森などに行かれるとおわかりになりますが、彫刻がひしめき合っているのです。それはそれで面白いのですが、本当に遊園地のようです。ゆったり並べていることは、霧島の最大のメリットだと思いますが、ストームキングでも、広大な土地の中にぽつんぽつんと置いてあって、一つの彫刻から一つの彫刻に移動するのに10分かかったり20分かかったりするような感じです。
 紅葉の美しいメインストリートの並木道の芝生の向こう側に小さく見えているのが、あとからまたお見せしますが、アメリカのマーク・ディ・スヴェロの《ピラミッディアン》と題された巨大な鉄鋼彫刻です。高さ30メートルぐらいありますでしょうか。これはリーバーマンと言う人の作品です
今映っているのは、この公園の中のメインストリートです(スライド画像:S.02)。これも高さは10メートル近くありますか、壮大な彫刻がぽつんと置いてあるのです。真っ赤に美しくさびている、巨大なコールテン鋼の円柱です。非常にシンプルです。美術作品というのは、いらいらするものとか攻撃的なものとか、必ずしも一般的な意味で美しいというだけではなくて、批評機能を持っていたり、社会に対峙するようなところがありますから、ある人にとっては醜く見えたり、神経を逆なでしたりするような作品だってないわけではありません。しかし、こういうピクニックに来るような公園では、楽しいとか目に温かい感じを与えるということは必要なことです。この作品も非常にシンプルで、子供が積み木をぽんぽんと置いたような楽しさがあります。一方で、基本的な構造とか構想力とか、造形的には非常にしっかりしています。素材も非常に美しいものです。
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 これは色が美しく出ていませんけれども、木立の中にある、同じくリーバーマンの真っ赤な彫刻です(スライド画像:S.03)。これは先ほどの彫刻とは異なり、円筒を斜めに切ったりしてさまざまな断面の面白さを演出しています。先ほど、彫刻は100もの視点があると言いましたけれども、この作品の周囲を回ってみるとまるっきり表情を変えてしまいます。絵画のように視点を独占できない面白さが、効果的に意識されていると言ってもいいかもしれません。
 スライドで見ると大きさが分からないかもしれませんが、ストームキングの中心をなすのは見上げるような巨大な作品です。スケール感というのは、彫刻にとって非常に重要です。大きい作品がいい彫刻というわけではありませんが、われわれは身体というモジュール、尺度を持っています。その前に立って見上げてみたら意外に小さかったり大きかったりということがあり、そういう経験が作品を実際に体験するということの面白さだと思います。ストームキングでは、みな巨大なのです。同じ形でも見上げるような規模を持っていると、ある種の崇高さを感じたりします。山でもそうでしょう。われわれは高いものに対するあこがれがあります。大きいものに対するわれわれの感情というものがあるのです。ただたんに色と形だけで鑑賞するのではなくて、そのスケール感の中で、あるときには圧倒的なものを覚えたり、肅然とさせられるような崇高な感じを覚えたりということが彫刻には可能だと思います。
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 これは皆さんご存じですか。イサム・ノグチと言うアメリカの戦後彫刻を代表する巨匠の作品です(スライド画像:S.04)。名前からお分かりのように、日本人の詩人の父親とアメリカ人女性の間に生まれたハーフで、国籍はアメリカですが、やはり自分の半分のアイデンティティーを持っている日本というものを非常に意識した作品を作っています。でも、それは別に日本趣味にこびたりするということではありません。「文化的なバックグラウンドの半分は日本にある」というなかで制作をし続けた人です。すでに亡くなっていますが、戦後で最も評価されるべき巨匠の地位を確立しました。
 これは《モモタロー》と言うタイトルです。この写真では分かりにくいかもしれませんが、ストームキングの一番中心の丘の頂上に置いてあって、この公園の最もシンボリックな作品になっています。
 《モモタロー》というのは、僕は桃太郎の詳しいお話は忘れてしまいましたけれども、あの桃から生まれた桃太郎のことです。多分、桃をぽんと割って、それがぱかっと割れて、このくぼみから桃太郎さんが出てきたのではないかという、ほのぼのとした神話的な光景でもあります。やはり造形力は非常に強いです。素材は御影石です。非常に美しい作品です。イサム・ノグチの場合は、彫刻の割れ肌の直接的なマチエールと、きれいに磨いたつややかな肌とを対比的に用いるというレトリックを持った彫刻家です。この作品は彼の代表作の一つだと思います。

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