鹿児島県霧島アートの森 開園二周年 美術講演会  
 
 霧島アートの森もそうですけれども、ストームキングでは完成した彫刻をどこかで買ってきて設置するというやり方を採っていません。当然ながらこのような巨大な彫刻を彫刻家のアトリエで作れるわけがありません。あくまでもここで展示するために、彫刻家を呼んできて、あちらこちら歩かせたうえで、自分の作品の設置場所を決めさせ、彫刻家の要望があれば、霧島アートの森と同じように、自然を大胆に変化させているのです。つまり丘を削ったり、逆に丘に土を盛ったり、専門の造園家を入れたりなどして、かなりいじっているのです。
 「自然と共生する」といっても、相当精密に計算しないと、そう簡単に彫刻とマッチするものではありません。何も自然に手を加えていないように見せながら、裏では非常にきめ細かい配慮がなされているのです。それが彫刻家の技術と言えるでしょう。イサム・ノグチもここに来てあちらこちら調べて、丘に設置するにあたって、その丘をだいぶいじったようです。一部を平らにしたり盛り上げたりして、非常に正確な計算のもとに、このような作品にたどり着いたのです。
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 これはケネス・スネルソンと言う人の作品です(スライド画像:S.05)。金属製のパイプをワイヤでつなぎながら、ぴんと張ることによって、空中に構造物を持ち上げていくという工学的な手法を使った、幾何学的な美しい作品です。地面には3本しか着いていません。空中の細いワイヤは遠くから見たらあまりはっきり見えませんから、金属製のパイプが空中に浮遊しているように見えます。不思議に思って近寄っていくと、次第にワイヤのテンションで支えられているという構造が分かってくるのです。彫刻は、重力との関係が非常に重要なのです。重力に抗するようにして作品の自重を持ち上げていかなければならないわけですから。それを逆手に取って非常に軽やかな彫刻を作り上げるという、ユニークな仕事をしている作家です。
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 これは最初に紹介したマーク・ディ・スヴェロと言う人の作品です(スライド画像:S.06)。写真で見ると小さく見えますけれども、巨大な鉄鋼彫刻です。やはり作品の周囲にはアップダウンがあって、丘があったり森があったりしていますから、いろいろな高さから見ることができます。ここでは空をシルエットにして彫刻が黒々と浮かんで見えるという美しい光景が出現しています。
 この作品を見たときに、この霧島とよく似ていると思いました。白と黒のまだらになっている石のベンチで、パリにいるダニエル・ビュレンヌと言う彫刻家の作品です(スライド画像:S.07)。ビュレンヌという人は、幅7センチのストライプを並列させるという作品をずっと一貫して制作し続けています。壁紙のようにそのストライプを張り巡らせる場合もあるし、建築の表をそれで装う場合もあるけれども、ここでは休憩のベンチです。休憩のベンチを7センチのストライプで作って、公園のあちらこちらに置いてあるのです。ベンチといっても、単なる石の箱のようなものです。
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 この霧島アートの森をご覧になった方はお気付きかもしれませんが、福澤エミさんの、鹿児島の火山岩を使ったベンチがあちらこちらにあります(スライド画像:K.01)。樹林ゾーンの中の休憩スペースに設置してあります。それらのベンチは非常にミニマルなシンプルな形で、実際のベンチなのだけれども作品でもあります。このような点でも、野外彫刻は美術館の中の屋内作品とは違います。そういう機能するツールを、作家に頼んでアートとして制作してもらうわけです。別に霧島アートの森はストームキングのビュランのベンチを知っていてまねしたわけではありませんが、期せずして同じようなことを両方が考えたということになります。
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 これは、霧島で言うと樹林ゾーンにあたりますが、芝生から森の斜面に入っていく境目に、ちょうど人の背丈より少し低いくらいの石の壁が、うねうねくねりながら森を縫うようにして続いています。イギリスの作家でゴールズワージーと言う作家が、現地で制作した《ストーム・キング・ウォール》と言う作品です(スライド画像:S.08)。最初は、この壁を200メートルぐらい作るという話だったそうですが、結局ゴールズワージーは現地を見ながら「これは端から端まで覆わなければ駄目だ」と言って、大変な時間をかけて、延々と森の中を走るような作品に作り上げてしまったわけです。木を縫うようにして蛇のように石の壁が続いていて、最後は谷底にずっと下りていくのです。しばらくこの壁に沿って歩いたのですが、どこまでもどこまでも続くので途中であきらめてしまいました。
 ぜひ皆さん、一度このストームキングにいらっしゃることをお勧めします。車で行くのが一番いいのですが、ニューヨークからストームキング・アートセンター行きのバスが1日に1〜2本出ていますので、車がない方はバスで簡単に行くことができます。ただし全部見ようと思っても、とても1日では見られないので、はしょりながら見て回るしかないのですが。

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