鹿児島県霧島アートの森 開園二周年 美術講演会  
 
 このゴールズワージーという人は、自然の中で仕事をするということを一貫してやっている人です。森の中に住み込んで、小川のほとりの石の上に、例えば紅葉の落ち葉を張り詰めて絵を描いたり、木切れを集めてカーテンのようなものを作ったりとか、自然の中に出て仕事をするのです。ですから、通常彼の作品は耐久性がなく、写真で発表されるだけなのですが、ここでは石を使っていますので、自然と一体化した仕事、自然の中での仕事という意味では同じですが、珍しく長く残る仕事をしたと言えます。
 先ほど霧島アートの森の運営委員会が開かれていて、その席で「ゴールズワージーにここにしばらく来て住んでもらって、樹林ゾーンのなかでの仕事をしてもらえたらいいな」と言う話が出ました。霧島の彫刻計画はほぼ完成してはいます。作品の数が少ないと思われる方がいるかもしれませんが、ゆったりと並んでいて、僕はこれでいいと考えています。ただ残念なのは、まだ森の中に作品が少ないので、そこでこういう作家に仕事をしてもらえたらと思っているわけです。同じ仕事をすると二番せんじになってしまいますが、霧島に来ていただければ、またストームキングとは異なる発想をしてくださるでしょうから、ぜひ彼の霧島での仕事を実現してもらって、所蔵作家に加えたいと考えています。
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 これはアメリカの彫刻家でリチャード・セラと言う人の作品です(スライド画像:S.09)。これは、正確な訳ではありませんが、《大地に突き刺さる》というようなタイトルが付いています。丘の斜面に厚さ7センチぐらいの分厚い鉄板を突き刺しているのです。何ということのないように見える仕事なのですが、先ほどのゴールズワージーとか、イサム・ノグチを含めて今までお見せしたようなアーティストたちは、やはり自然と共生しよう、お互いにお互いの美しさを発見するようにうまく調和を取ろうという考えなのですけども、セラは自然と闘うのです。タイトルからも分かるように、ある意味では牧歌的なのどかな丘の斜面に人為的な凶暴な手段をもって挑んでいます。
 この人は自然だけではなくて、例えば都心においても徹底的に闘います。かつて大問題になったのですが、ニューヨーク市の連邦裁判所があるフェデラル・プラザの円形の広場に、市当局からアメリカを代表する巨匠中の巨匠であるセラにパブリックアートの制作が依頼なされました。フェデラル・プラザというのは周囲が高層ビルですから、昼休みになると、皆そこの隅に腰掛けてコカ・コーラを飲んで、ハンバーグを食べて簡単な昼食を済ませてしまう、そういうごく庶民的な広場です。
 そこに彫刻を作ってくれと言われたので、セラは《ティルテッド・アーク(傾いた弧)》と言う作品を1981年に作ったのですが、それは長さ36.6m、高さが3.6m、厚さがこれと同じような鉄板で、それを湾曲させ自立させて広場の真ん中に設置してしまったのです。その結果、人々の視線が完全に遮られてしまうことになりました。しかも、こんな分厚い鉄板が傾いていますから、実際倒れないにしても、そこへ行くと皆不安になります。倒れたら人間なんてぺちゃんこになってしまいます。加えて真っ黒な鉄板ですから、刑務所の壁みたいなものです。今までのんびりした市民の憩いの場所だったところが、いたたまれない場所になってしまったのです。当時、僕もその広場に行ってみたのですが、たしかに異様な緊張感のある作品でした。そうして「こんな作品は、市民の日常的な憩いの場所に設けるべきではない」という撤去運動が起こったわけです。
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