鹿児島県霧島アートの森 開園二周年 美術講演会  
 
 野外彫刻公園の作品は、人を不安に陥れたり、いらいらさせたりするものではないほうがいいと先程申し上げましたが、そうすると、無難な、非常にカラフルなシンプルな形態のものばかりになってしまって、バリエーションがなくなりがちです。そういう意味では、ストームキングはうまいやり方をしています。ちょっと異様な表現を所々に挿入したり、それから先程のセラの作品のように、自然に対して挑戦するような、挑むような作品も入れています。いろいろなバリエーション、幅を持たせながら、野外彫刻公園としての単調さを避けるという工夫がなされていました。
 そういう意味では、われわれも霧島でかなり苦労いたしました。一般に、野外彫刻というと上野の森の西郷さんのような立像とか、シンプルな幾何学的彫刻というイメージがあります。それも似たり寄ったりで、無難だけれども、一つあればもうたくさんという風になりがちです。そのような単調さを避けるために、例えば、ダニ・カラヴァンの鉄の廊下みたいな作品(スライド画像:K.02)が中空に突き出していたりするわけです。この作品は、いわゆる彫刻としては見られない、建築と言ったほうがいいかもしれませんけれども、その端に行くと前が全面ガラスになっていて、高千穂、天孫の降臨の地を見晴らす展望台のようなものがあったりします。他方、ダン・グレアムのガラス製のあずま屋のような作品(スライド画像:K.03)や、チェ・ジョンファの金色の額縁(スライド画像:K.04)を並べてみたりとか、牛島均の遊園地の遊具のようなものを置いたりとか(スライド画像:K.05)、そうかと思えばその横には石のオーソドックスな彫刻があったりとか、いろいろバリエーションを付けているのです。
 やはり、彫刻は野外であればいろいろな制約を受けてきます。自然環境は厳しいです。雨も降れば、雪も降るし、風も吹きます。従って、それに耐える素材も限られてくるわけです。耐久性という点で、木は使いにくいです。そうすると金属、ブロンズ、石、コールテン鋼というようなものに限られてくるわけです。さらに構造的にも強くなくてはいけないというと、必然的にそれぞれが似通ってきて単調になりがちです。それをうち破ってバリエーションを付けるということを考えると、このようなガラス入りのケースの中にひつぎを並べた作品は、ユニークさという点で成功していたと思います。
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 ストームキングでは、1936年にできたお城というか大邸宅というか、ノルマンディースタイルのクラシックな建物があって、美術館としていろいろ展示を行っています(スライド画像:S.12)。霧島の美術館建築の雰囲気とは大変異なりますが、面積は大体同じくらい、売店もあったりして、構想としてはよく似ています。
 先程イサム・ノグチは戦後アメリカを代表する彫刻家であると申し上げましたけれども、これは、デイヴィッド・スミスと言う、イサム・ノグチと並び称せられる抽象彫刻家の作品です(スライド画像:S.13)。鉄の作品ばかり作った人で、室内に人の背丈ほどのあまり大きくない彫刻を並べたりします。
 これはルイーズ・ブルジョアと言う、フランス出身のアメリカの作家による、大理石を並べた作品です(スライド画像:S.14)
 美術館の周囲でも展示がなされていました。ちょうど、アメリカのカルダーと言うモビールで有名な作家の特別展をしていました。モビールはご存じと思いますが、天井から釣り下げ、風で動く彫刻です。これは、屋外に置かれた大きなモビールです(スライド画像:S.15)。実は、霧島にもカルダーの作品が欲しかったのですが、大変高価過ぎて購入できませんでした。大きな作品だと数億円にもなるのです。その代わりと言っては失礼にあたるかもしれませんが、西野康造さんの非常にすてきな、霧島の風を受けて羽ばたくモビールが園庭に置いてあります(スライド画像:K.06)
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 カルダーは、モビールという動く彫刻ばかりではなくて、スタビール、動かない彫刻も制作しています(スライド画像:S.16)。真っ黒に塗られた非常に美しい、シンプルな形の作品です。芝生が広がる雄大な自然の中に置かれていて、大変美しい光景でした。
 霧島でもそうですけれども、このような美しい彫刻公園の中で一番喜んでいるのは子供たちです。きゃっきゃ言って走り回っているのです(スライド画像:S.17)。 これはアリス・エイコックと言う人の作品です(スライド画像:S.18)。この作家は建築的な造作を行っている人で、この作品もビルから言うと4階建てぐらいの高さになるのではないでしょうか。その中に湾曲したループが上っていくのです。彫刻と建築はもちろん違います。建築というのは、住居であったり、仕事場であったり、店舗であったりという機能があります。彫刻は自己目的的だと言われますけれども、純粋に造形だけを考え、建築は機能を考えます。ところが、機能を持つが故のメカニカルな美しさとか、構造的な美しさとか、機能を持ったものの美しさがあります。建築は、機能の中に無理に視覚的な美しさを追求するのではなくて、有効に機能するということ自体が美しさに結び付いているのです。機能的な階段とか、らせん階段は美しいものです。そういう建築的な構造が持つ、単なる造形的な美しさだけを目指して生み出されたのではない美というものを、アリス・エイコックは非常に興味を持って追求しているのです。だから、彼女の作品はいつも建築的なのです。疑似建築的というか、実際にその中で暮らしたりできるわけではありませんが、一見機能を持った建築に見えるような、そのような造作を目指している非常にユニークな作家です。この作品もストームキングで自由に制作され、これだけ壮大な規模のものになってしまいました。

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