アートラボ 美術作家 平川渚「手編みの物語をあつめる」プロジェクト

アートラボ 美術作家 平川渚「手編みの物語をあつめる」プロジェクト

美術作家 平川渚は,主にかぎ針で糸を編むことにより作品を空間へと拡げ,場所や人々の記憶,時間へとアプローチする手法に取り組んできました。また最近では,個別の記憶を宿した素材として,人々から集めた古着やあみものを扱った作品なども制作しています。
本館では2022年度に平川の個展を開催する予定です。これに先立ち2021年度には,新作の材料となる手編みのものを本館の地元である湧水町の人々から集め,それらをほどいて毛糸に戻し,さらにひとつの大きな作品へと編み直すためのプロジェクトを展開しました。
平川はこれまで,さまざまな地域へ出かけ,来訪者の視点でその土地と関わり制作を行ってきました。そして現在,生活の拠点を鹿児島に構え,今後もこの土地で生きていくことを前提にしたことや,コロナ禍における自然な態度として,ごく身近な場所をより深く見つめ掘り下げる気持ちが芽生えたといいます。
本プロジェクトの成果は2022年度の個展で発表する予定ですが,集めた手編みのものにまつわる個別の物語にフォーカスした展示を2021年度に行いました。

【主催】鹿児島県霧島アートの森

【協力】湧水町/湧水町教育委員会/霧島山麓湧水町観光協会/吉松物産館ふれあい市場

【プロジェクトの流れ】
1 あみものとエピソードを募集(4/15-5/30)
湧水町在住の方を対象に,くりの図書館,湧水町観光協会,吉松物産館ふれあい市場,本館の4か所で手編みのあみものとそれにまつわるエピソードを募集し,20人の方が応じてくださいました。
* 募集チラシPDF

2 集めたあみものとエピソードを用いて平川さんが作品を制作
集めたあみものを金糸でつなぎ,空間に立ち上げる作品を平川さんが制作しました。エピソードは展示会場となる図書館から着想を得て,本の見開きページをイメージした紙に記されていきました。

3 集めたあみものとエピソードにフォーカスした展示「いとなみ」を開催(10/1-11/7)
くりの図書館を会場にプロジェクト展「いとなみ」を開催しました。小会議室ではあみものが空間に広がるように展示され,和室コーナーでは20人分のエピソードが展示されました。(Photo:Toshio Moriyama)

* 展覧会チラシPDF
* 展覧会概要はこちら

4 「あみものをほどく」ワークショップを開催(11/12-11/21)
展示したあみもののうち寄贈いただいたものを糸にほどくワークショップをくりの図書館で開催しました。参加者の手によってあみものがたくさんの毛糸玉へと姿を変えました。
* ワークショップの詳細はこちら

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企画展の情報

会場
湧水町くりの図書館
開催期間
2021/04/15 〜 2021/11/21
■あみものの募集:4/15〜5/30
■プロジェクト展「いとなみ」:10/1〜11/7(月曜・10/28休館)
* 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため,予定していた開幕日(9/24)が10/1へ変更になった。
■「あみものをほどく」ワークショップ:11/12〜11/21(11/15休館)
観覧時間
■プロジェクト展「いとなみ」:10:00〜18:00(金曜は19:00まで)
■「あみものをほどく」ワークショップ:10:00〜16:00
観覧料
無料

アーティスト紹介

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平川 渚(ひらかわ なぎさ)
美術作家。1979年大分県生まれ,2013年より鹿児島県在住。各地に滞在し,場所から読み取った素材をもとに,主に糸をかぎ針で編んで固有の空間にかたちを立ち上げるインスタレーション作品を制作。また,人々から集めた古着やあみものを素材に個別の記憶や出来事へアプローチし,作品として再編する試みも並行して行っている。
主な展示に2017年「Local Prospects 3 原初の感覚」(三菱地所アルティアム/福岡),「メッセージ2017 南九州の現代作家たち」(都城市立美術館/宮崎),2016年「糸島国際芸術祭2016 糸島芸農」(福岡)など。都城市立美術館に作品収蔵。https://www.nagisahirakawa.net
Photo : Eiko Shimozono